キャンパスの外にある学びを探しに!
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201410/01

【韓国の大学生のキャリア意識】自分の「ストーリー」を、経験と知識で豊かなものに

延世大学校 政治外交学科 リ・ドンウク(Dongwook Lee)


数々の韓国映画やドラマのロケ地として採用され、蔦の絡まる趣のある校舎が美しい、ソウル・新村の延世大学校は、韓国でも有数の名門校だ。夏休みで落ち着きのあるそのキャンパスを訪れ、日本への滞在や、フランスへの留学経験のある韓国人大学生のリ・ドンウク君と会った。話を聞いてみると、日本と韓国の大学生、国は違えど、自分たちの未来についてはどうやら同じ方向を向いているようだ。

日韓中リーダーシップフォーラムで発表するドンウク君

海外での学びをアウトプットすることで、留学は一段と効果的に

Q 日本では今、グローバル人材の育成が叫ばれています。韓国ではいかがですか?

-これまでグローバル企業といえば、サムスン(SAMSUNG)やヒュンダイ(HYUNDAI)に代表される大企業を指していましたが、最近では、スタートアップなどのベンチャー企業にもグローバル化の波が押し寄せています。新聞を見ていても、海外企業からのラブコールが増えており、以前に増して大学生はグローバル化を意識していると思います。そのため、私が通う延世大学校(Yonsei University)では、GPAのスコアが3.4以上の学生であればほとんどが交換留学を目指していると思います。僕も高校生の頃から興味のあったフランスに留学していました。

Q フランスに留学して、何か新しい価値観に触れたり、気づきはありましたか?

-私たちアジア人がイメージするフランスは、ファッション、フランス料理、美術館といった感じでしょうか。韓国にもフランスのそうした分野と交流が盛んな産業は多くありますが、私は政治外交を専攻していたので、それらには全く興味はありませんでした。むしろ、韓国であまり取り上げられない分野について関心がありました。例えば、パリ13区にはヨーロッパでの最大級のチャイナタウンがあります。その地区は観光客も少なく、白人もあまり見かけません。そうした地域で暮らす中華系の方も含めた、東南アジア系や日系など、アジアにルーツを持つ人たちとの交流を大切にしてきました。

フランスにもアジア系の人が一定数いるという事実を知り、ビジネス的な視点で考えるようになりました。例えば韓国の輸出企業があるとしたら、その企業の考えるフランスでのターゲットは、私たちがステレオタイプで抱いているフランス人、つまり、白人が中心になりがちです。そうした時に、アジア系のコミュニティにも着目するという視点をその企業に持ち込むことができれば、そのビジネスにおいて私が貢献できる可能性が高くなります。これは一例ですが、物事を違う角度から考えることによって、自分自身が活躍できるフィールドはいくらでも広げることができると気づきました。

 Q その他、フランスではどのようなことを学びましたか?

 例えばですが、「k-pop」は本当にフランスで受け入れられているのだろうかという疑問がありました。そこで、フランスのクラブで出会ったk-popファンたちにインタビューを行うなど、自分で興味関心を持ったことについては積極的に調べるようにしました。その結果、エンターテインメント産業はヨーロッパでも通用すると確信を持つことができました。

韓国人としてフランスに住んでいる人たちのための新聞があるのですが、その紙面に、こうしたインタビューなどで得た様々な調査結果を、友人たちと一緒に記事として配信もしていました。アウトプットすることで、一層理解が深まりますし、韓国人としてこんなことをフランスで学んでいたという記録を残したかったのです。

とにかく日本語がうまい!

面接で求められるのは「スペック」ではなく「ストーリー」

Q 韓国の大学生の間ではどのような企業が人気ですか? また、そうした企業に入るにはどういう能力が必要だと思いますか?

-最近は、少し元気を失っていますが、やはりサムスン電子とヒュンダイ自動車が人気です。これらに共通しているのは、共にグローバル企業であり、利益が1兆を超えているというところです。日本でいうと、トヨタ自動車などにイメージが近いと思います。

韓国の大学生は、近年まで、文系は留学しなければ就職活動で不利になるという風潮が強く、自分のスペックを上げることに必死になっていました。しかし、最近、採用の基準が留学したという事実(スペック)ではなく、留学に至った背景や、留学先で体験したことや学んだことといったストーリーに変わってきました。つまり、自身の経験を言語化できることが重要です。そこで、他の就活生と比べ、どうしたら特別なストーリーを語ることができ、企業の人事担当者に注目されるか、みんな必死になっています。

とはいっても、ストーリーを聞いてもらえるのは面接の場です。そこに進むための書類選考では、英語の資格試験の成績や素養があるかどうか見られます。TOEICは900点前後だと優秀かな。例えば、トータルのスコアはそこに満たなくても、スピーキングだけ満点とかであれば、それは評価されると思います。

Q 具体的にどういう経験があると人と差別化できると思いますか?

―難しい質問ですが、いうならば、私たちより上の世代の人たちには考えもつかないような、奇抜でイノベーティブな発想や着想を海外で得て、更にはそれを自国に持ち帰り応用できるような人でしょうか。

この校舎、映画やドラマでおなじみですね。池袋にもありそう。

海外に出て自分を客観的に見つめることがキャリア意識を高めてくれる

Q 将来はどのような仕事に就き、どんな未来を描いていますか?

―実は、フランス語の能力が評価され、韓国の貿易企業に内定し、アフリカのコンゴ民主共和国に2年間の駐在が決定しています。友達にコンゴへ行くと話すと、「大丈夫? 危ないんじゃないの?」と言われることが多いのですが、僕はフランスに留学していた時、コンゴ人とも交流して、コンゴがどんな国か知っているため、何も怖くありません。

遠い未来のことは自分でもわかりません。だから、5年後自分が何をしているか想像してみたいと思います。韓国に戻ってきて、韓国企業で外国人と一緒にITサービスや新規コンテンツの分野で一緒に企画開発を行えたらいいと思っています。そしてターゲットとなる地域は私の経験が活かせそうな、フランス、東アジア、そしてこれから赴任するアフリカに限定したいですね。さらにいえば、そうした部署の課長くらいに昇進しているといいかな。少し具体的過ぎますかね(笑)。海外に出て、自分の国を客観的に見る機会が多かったことと、日ごろからこうしたキャリア設計を考えるのが好きなので、比較的自分の将来はイメージしやすいと思っています。

(取材・文 NOIZ編集長 丸山 剛)

【編集部から】

ドンウク君を紹介してくれたNOIZ学生編集部スタッフから、昨年、立教大学で開催された「日・中・韓リーダーシップ・フォーラム」で彼と一緒に過ごした際、日本語は特に流暢というわけではなかったという情報を得ていたため、英語でのインタビューを覚悟していた。しかし実際にキャンパスで出迎えてくれたドンウク君は、すべての対応を日本語でこなしてくれた。汗。「韓国語は世界でここでしか使われていません。外に出ていくには他言語を習得しなければなりません」とにこやかに話す彼は、日本語のほか英語とフランス語もこなす。コンゴで活躍するドンウク君の様子をいずれまた是非紹介したい。


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