キャンパスの外にある学びを探しに!
よく学び、よく遊ぶためのWEBマガジン

201409/30

自分の軸は「家族」のなかにある。その軸を大学生活の御守に。

学生団体SWITCH 元代表 桐本滉平


大学生1000人が賛同する大運動会を仕切り、その収益を途上国の子供たちの支援にあてる「学生団体SWITCH」。学生生活を充実するための「きっかけ」を届けるために活動する100人余りのメンバーをまとめているのが、輪島塗で有名な石川県輪島市出身の大学3年生、桐本滉平君だ。活動を通し、自らもたくさんの「きっかけ」をもらったという桐本君に、今振り返る受験生時代と大学生活について語ってもらった。

大盛況に終わった「Charity Sports Festival2014」

震災を機に見直した家業の尊さと可能性

2011年3月11日の東日本大震災は、僕の将来にも大きな影響を与えました。翌日に予定されていた、志望していた国立大学の二次試験は中止となり、試験にチャレンジすることもできないまま、浪人が決定したのです。

友人たちが大学に進学するなか、自分だけが取り残された気持ちになり、何も考えられず、何も手をつけられない日々が続きました。そんな時、いつもそばにいて心の拠り所となってくれたのが家族の絆でした。家族への感謝の気持ちを強く感じた時、同時に家族がずっと大切にしてきた「輪島塗」という家業がなんだかとても尊く思えるようになりました。

震災は、日本から多くを奪い去りました。日本が音を立てて崩れていくように見えるなか、日本人が大切にしてきた伝統工芸を必死で守り、時代とともに昇華させてきた家族の姿勢に心を打たれました。多くの人が大切な家族を失い、仕事を失い、企業が倒産するなか、日本人が大切にすべきものは、改めて日本を象徴する、日本文化や伝統工芸。それを、「僕も守っていきたい」。これが長い時間をかけて自分自身が出した答えでした。自分がこれから何をすべきか、これまでバラバラに存在していた思いがすべて点と線でつながり、さらに面となったことで、はっきりと目に見えるようになったのです。

日本を象徴する、日本文化や伝統工芸。それを、「僕も守っていきたい」

伝統工芸の世界に革新をもたらす経営者になるために

こうして自分のやるべきことがわかり、将来の夢を描けるようになりました。職人である祖父、そして輪島塗に新しい風を吹かせたデザイナーの父。では僕は一体何をすべきか。実家の「輪島キリモト・桐本木工所」は、「ルイ・ヴィトン」ともコラボするなど、さまざまなメディアに取り上げられていました。そして日本のみならず海外からも注目された産業だと気づいた時、「現在の価値観にあった伝統工芸品を日本だけではなく世界に広めたい」という夢が僕の中に生まれました。デザイナーの父が創造そして開拓した新たなマーケットをさらに広げ、伝統工芸の世界をリードできる人材になりたい。これが僕の役目。

こうして進路が決まりました。「マーケティングを勉強して、伝統工芸の世界に革新をもたらすことができる経営者になりたい」。そう考え、理系から文転し、商学部に進むことに。「大学が自分の夢に直結している」。そう信じて、翌年東京に上京したのですが……。

伝統工芸の世界をリードできる人材になりたい

SWITCHとの出会いで取り戻したモチベーション

国立大学でデザインを学んだ父から聞いていた大学の授業は、少人数制で実践的なものだったため、大学という場所で、どれだけ自分を成長させられるだろうかと期待に胸を膨らませていました。双方向に情報交換ができ、自分の発信の場であり、隣の学生と刺激し合い、そしてどんどん社会と繋がっていける。そんなイメージを大学に抱いていたため、数百人が無関心に授業を受ける現実に、裏切られた気持ちでいっぱいになりました。

一気に降下したモチベーションを少しでも上げたくて、大学の授業以外に夢中になれることを求め、複数のサークルに所属したり、いろいろな人に会って話を聞いたりすることで、自分なりに隙間を埋められる「何か」を求めていました。そんな時、友人に紹介されたのが「学生団体SWITCH」でした。大学の枠を超えて活動する「インカレ」スタイルであるSWITCHは、さまざまなバックグラウンドを持った学生と繋がりたいと考えていた僕にとって、30以上の大学からメンバーが集まる環境そのものに、「これだ!」と直感しました。

大学は社会に出る前の自分にとっての最後のチャンス。「ここで自分の可能性を広げるんだ」という確固たる思いがあったため、他の同年代と比べて燃え滾るものがあったと思います。だから、SWITCHと出会い、救われた気持ちでした。ここでの活動は間違いなく充実しています。自分の視野を他の学生が追いつけないくらい広げてくれると思っているから。SWITCHに入って、自分が興味のなかったもの、例えば団体の軸である国際協力やボランティアといった、人のために何かができることを喜びとする、「ソーシャルビジネス」について知ることができたり、さまざまな協賛企業の方や他の学生団体など、人脈が広がったことも大きな収穫です。

1000人以上の大学生が参加!

学生団体での活動が大学での学びを見直すきっかけに

SWITCHは、途上国の子供たちを継続的に支援しています。毎年秋に大学生1000人が参加して行う大運動会の参加費や企業からの善意を届けに、メンバーが有志で現地に足を運んでいるのですが、日本と現地の子供たちを比較して、小学校での教育がいかに重要だということに気づかされました。小学校の頃から夢を持ち続けることが大切で、その「夢を叶えるツールこそが学校」ではないでしょうか。

SWITCHでの活動は、大学での学びを改めて見直すきっかけにもなりました。メンバーと「大学教育は変わるべきだ」とよく話しているのですが、与えられるのを待つばかりではなく、自らやりたいことを見つけて、活用する方法はないのかと考えることが大切だと気づき、2年生からゼミがあるということを知り、「ゼミをうまく活用してみよう!」と思うようになりました。そして、エリアごとに地域産業に焦点を当てた研究を行う「エリアマーケティング」に興味を持つようになりました。さらに、ある教授が輪島塗の研究論文を発表していることを知り、「これだ!」と思い、そのゼミに焦点をあて、自分の将来の夢や思いを教授に伝えたところ、倍率10倍のゼミに合格することができました。

こうして大学の外での活動が、大学での学びに還元されるという好循環を経験することで、大学生活そのものを充実させることができました。そして今思うこと、それは、「どんな形であれ、将来、日本の若者に協力していきたい」ということ。具体的な自分の将来の姿はまだまだ模索中ですが、どんな自分にもなれるように力をつけておきたいです。(談)

(取材・文 NOIZ編集長 丸山 剛)

【編集後記】

初対面だった桐本君と話し始め、気付いてみたら4時間が経過していた。自分がこれから歩むべき道を、改めて自分に言い聞かせるように、ひとこと一言を丁寧に熱く語ってくれた。9月の一大イベントで大成功を収めたのを機に、次の世代にバトンを渡した桐本君の中にいま深く刻まれている気持ちはおそらく「感謝」だろう。しかも、大学入学後に感じた幻滅にさえも、懐かしさとともに感謝の気持ちを抱いているに違いない。桐本君の良さは、その幻滅に対し腐らず、前を向いたところだ。マイナスをバネにできたところだ。輪島塗を世界に。いまや「志」に変わっているに違いない桐本君の「夢」を、ワクワクしながら見つめていきたい。


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